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NANTEN

500×500×150

 瀬戸内の島々は芸術祭で賑わい、そしていつもの島に戻っていく。丸亀市本島町笠島地区(国重要伝統的建造物群保存地区)は変わらず凛とした佇まいで、何事もなく時を止めたまま風が流れている。


 瀬戸内の島々は過疎化と高齢化が進み、本島においてもそれは同様で、笠島地区は人の気配のない家が目立つ。盆や祭り、正月など年に数度、主は県外から 戻ってくるそうである。コンビニや量販店など便利なものはなく船で丸亀まで買い物に行かなければならない。墓参りや仏前の花の購入さえ、高齢化が進んだ 島々のお年寄りにとってこの環境は不便きわまりない。ある島では、生花ではなく枯れないビニール製の花が売られていたりする。笠島地区は、まるで世の中の 流れから遮断されたような生活を強いる。それゆえ人のあふれる観光地と少し違い、汚されることなく時が止まり、美しさをそのまま保っているのだろう。


 今回大切なことはこの完成されたような空気を乱したくないということと、作品は人のためだけではなく、死者のためのお供え物としても存在させるというこ とである。できるだけの調和を考え、照明という機能と作品を両立させることを心がけた。生花を準備できない時は作品に灯をともして欲しい。

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