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erosion
従来、絵画などの平面作品においては、紙やキャンバスなどの基底材に油絵の具や岩絵の具などの色彩を定着することによって成立してきました。今回の試みは、鉄という比較的不安定な素材を平面作品の画材として使用します。
鉄は酸化し、時間とともに変化します。鉄錆による表現によって作品の中に湿度や時間の概念を封じ込めようと思います。サイズはサムホールとして比較的小さめの作品を約20点制作しました。
まず水張りしたブレダンに、誰もが子どもの頃遊んだ砂絵のように、アクリルエマルジョンを接着剤として絵を描き、乾かないうちに鉄粉をまき定着させます。その後水分を与えることにより、酸化を促進させ、錆は紙を通過し裏まで浸食していきます。これ
は、RUSTY FIELDで行った技法と同じです。
この作品は表から見る作品と裏返してみる作品の2通りで提示したいと思います。そのため、裏から見る作品においては水張り、描画の段階から紙の裏を使用し、提示の際に、ひっくり返した状態で額装する必要があります。問題点として鉄粉を定着させるためにアクリルエマルジョンを使用しているため、鉄と紙との間に薄くではあるが、アクリルが存在するという点が気になります。このシリーズを作品1とします。
次の試みとして作品1として制作した平面の上から、湿らせた同じ紙(ブレダン)を重ね、糊とともにエッチングプレスにより圧着させます。紙はエンポッジングされた状態で緩やかに描画の跡を見せます。作品1で湿度と時間を封じ込めましたが、それに圧
力を加えたものが作品2となります。
2つの作品とも絵画ではあるが紙と鉄と空気や時間により成立する点では共通しています。
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